Q.補償導線とは

1821年Zeebeckにより発見された金属・合金の熱電現象に、その基礎をおく熱電対のリード線として、用いられるものが、補償導線です。

◇熱電対の原理
異種類の金属AとBを、図1のように、接触させた閉回路で、2つの接触点T1とT2に温度差を与えると、両接触点間に電位差が生じ、T1とT2の温度差に応じた電圧が発生します。これを「ゼーベック効果」といいます。 このゼーベック効果を応用して、2つの異種金属を接合した一端を、一定温度に保ち(基準接点)、他の一端を測ろうとする温度内に挿入し(測温接点)、両接点間に生じた起電力を測定して、温度を知ろうとしたもの
が、「熱電温度計」です。また、これに用いる一組の異種金属が、熱電対です。熱電温度計は、熱起電力を温度に換算して表わすため、基準の温度を一定にする必要があります。一般的には、基準接点の温度は、0℃を用います。
温度測定回路の例
図1
◇補償導線のはたらき
熱起電力を用いて、温度を測定する場合、測温接点から基準接点まで熱電対を、そのまま延長して、測定するのが理想的です。しかし、近来コンピュータを主体とした、電気的計測システムの普及により、各種プラント、火力発電所、原子力発電所等のように、温度の測定は、管理室に集中させて測定する場合が多く、測温接点と基準接点の間が、数百メートル以上離れる事が多々あります。
このような場合、熱電対は、高価であり、また、電気抵抗、絶縁抵抗、耐湿、機械的強度、およびその構造等の種々の問題点から、使用しがたいものがあります。そこで、熱電対と計器の間を、常温付近において、熱電対と近似の熱起電力特性を有する導線を用いて配線いたします。これが“補償導線”です。